語り部
『ここから、夢喰姫の冒険は佳境へ入ります。
 たどり着いたのは、宝石があると言われる森の中。私の案内に導かれ、枯れ井戸のついた小さなお家を見つけました』

ハミ
「旅人さん、あのお家は?」
旅人
「あそこには、お婆さんが住んでいます。この森の事なら何でも知っている不思議なお婆さんです」
ハミ
「それじゃあ、宝石の場所も知っているかしら?」
旅人
「ええ。もしかしたらあの方は、宝石の守り人なのかもしれません」
ハミ
「どういう事?」
旅人
「こちらへ来てください」
ハミ
「井戸? でもこの井戸枯れちゃってるわ」
旅人
「私がお聞かせした宝石のお話を憶えておいでですか?」
ハミ
「ええ、宝石のせいで争いが起きて、争いを止める為に、暗い洞窟の中に宝石を隠したのよね」
旅人
「いいえ、私は『暗い洞窟』ではなく『暗い穴』と言いました。この井戸こそが、その穴なのです」
ハミ
「え!?」
旅人
「あちらにロープがありますから、それを使っておりましょう」
ハミ
「え、ええ……。でも旅人さん、井戸なら井戸って言えばよかったじゃない、どうしてあんな言い方したの?」
旅人
「誰かが見つけてしまえては、隠す意味がないでしょう。本来なら、争いの火種となる、探してはいけない代物ですから。とはいえ、やすやすと持ち帰れるとも思っておりませんが……」
ハミ
「そうだわ、旅人さんは一度宝石を見つけたのに、どうして持ち去ろうと思わなかったの? 望みを何でも叶えてくれるのに……」
旅人
「私のようなモノには過ぎたる宝です。それに、あの美しさと誰もが忘れたお話を知ることが出来ただけで、十分だったのです。さ、宝石はこの先です」

語り部
『井戸を降った先に続く暗闇、灯りの無い道を壁に手を付けてゆっくり進みます。暫く進むと、暗闇の中だというのに煌きを放つ、青く美しい宝石がありました』

ハミ
「これが、旅人さんの言ってた御伽噺の宝石……」

語り部
『夢喰姫が宝石へ近づきそっとその石に触れると、ぱちぱちと青白い光の粒が飛び、辺りが明るくなり空間を照らしました。
 何事が起きたのかと口を開けて呆然としている夢喰姫をよそに、宝石の置かれた台座の裏から少年の姿をした宝石の魔人があくび交じりに出てきます』

魔人
「ふああぁああ〜〜〜……なんだぁ、おいおい、前目が覚めてからまだ100年も経ってねぇじゃんかよぉ。って、あ! お前! 5年前に俺の快眠を邪魔しやがった奴!! まーたやってきて何の用だ? 俺は寝るので忙しいんだよ、お前は5分おきに俺を起こしに来るアラームかなんかなのかぁ?」
旅人
「たはは、あなたからしたら私は目覚まし時計ですか」
ハミ
「この人が……宝石の魔人なの?」
魔人
「お、今回はかわい子ちゃん連れなのか? はは〜ん、成程、お前さてはデートコースに俺の寝床を組み込みやがったな? いくらこの石が綺麗だからってな! 人の睡眠を阻害して見せびらかしに来るのはどうかと思うぜ!!」
旅人
「私は夢喰姫を此処まで案内しただけです。さあ、夢喰姫、私が出来るのはここまでです。後はあなた自身の言葉で、力で、彼を説得して下さい」
ハミ
「う、うん! ありがとう、旅人さん!」
魔人
「ちょっと待ってくれ。話が見えないぜ。デートじゃないなら何しに来たんだかわい子ちゃん」
ハミ
「それは……」

語り部
『夢喰姫はここに来ることとなった経緯を魔人へ話し始めました。そういう性分なのか、途中茶々入れをしてきましたが、最後まで話を聞いてくれるようです』

魔人
「成程なぁ」
ハミ
「あなたを持ち帰って、私の気持ちをお母さんに解ってもらいたいの」
魔人
「ふーん……。悪いがお姫様、俺は嫌だね」
ハミ
「えっ……」
魔人
「俺って奴がいると皆おかしくなっちまうのさ。殴る蹴るじゃ終わらねぇ。折角良い寝床を用意してもらって平穏無事に惰眠を貪ってんだから、放っといてくれよ」
ハミ
「そんな……」
魔人
「それによ、女王様って奴は良い母親じゃねぇか。お前の事心配しての事だろ? 俺なんかを頼るより、腹割って話した方が良いと思うぜ」


■魔人の忠告を受ける

■魔人を説得する

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