ハミ
「そう、よね……。魔人さんの言う通りだわ。私、ちゃんとお母さんと話さないで出てきちゃったから…」
魔人
「そうしてやんな! つう訳で、俺はまたぐっすり眠ることにするぜ!」
ハミ
「あ! でも待って!」
魔人
「あん?」
ハミ
「お話した通り、私のほかにも3人、あなたを探してる人がいるの。彼らのうちの誰かがあなたを持って帰ってきちゃうかもしれないわ」
魔人
「はー、まったくよぉ、迷惑な話だぜ。だが心配には及ばねえよぉ〜、俺、タダで持って帰られたりなんてしねーから」
ハミ
「本当?」
魔人
「おうよ! その証拠を見せてやる。お前ら、俺の手を取りな」
ハミ
「こう…?」
魔人
「お前も遠慮せず俺様のお手手に触れろよ」
旅人
「私は遠慮しておきます」
魔人
「へっ、そーかい」
ハミ
「それで、どうするの?」
魔人
「あーっと、そうだな。お前の帰る場所…お城の事を強く考えて目を閉じるんだ」
ハミ
「う、うん」
魔人
「……っつう訳で、もう二度と会う事は無いな。あばよ、お姫様」
ハミ
「え?」
語り部
『不思議に思って夢喰姫が目を開けると、其処は見知ったお城の前。宝石も魔神も私の姿もそこにはありませんでした。
事態が呑み込めずに立ち尽くしていると、お城の兵士が夢喰姫の姿に気付き駆け寄りました。無理もありません、誰にも告げずに抜け出して、皆大層心配していましたから。
連れられるままに城内に入り、広間へと向かうと、其処には不安と怒りと安堵と喜びが混ざった表情の女王様が居りました』
女王
「ハミっ!!! 嗚呼、無事でよかった――!!」
ハミ
「お母さん……」
女王
「勝手に居なくなって…!! 皆心配したのよ!!」
ハミ
「ごめんなさい。でも私、わかって欲しかったの。私のことを思って色々準備してくれたのは嬉しいけど、婚約も結婚も、一緒になる人も、自分で決めたかったの」
女王
「そうよね……私もあなたに無茶を言っていたわね……ごめんなさい、ハミ」
ハミ
「宝石は……探したけど見つからなかったわ。きっと旅人さんの作り話だったのね」
女王
「そう……。なら、他のみんなもじきに戻るかしら。そうしたら今度は落ち着いて話し合いましょうね、あなたも一緒に」
ハミ
「うん!」
女王
「そうだわ、みんなが戻るまであなたの話を聞かせてちょうだい。小さな冒険家さん」
ハミ
「もちろん!」
語り部
『女王様と夢喰姫は強く抱き合い、その光景を見る家来たちは喜びと感動で涙を流しておりました。
程なくして、宝石を探しに出たメイ王子、マク王子、魔法使いの三人がそれぞれ戻ってきましたが、三人ともが「宝石は無かった」と言いました。
ふふふ、これは内緒のお話ですが、私が少し噛ませていただきました。望みを叶える宝石は、今もあの場所で眠っております。
皆揃っての話し合いの末、女王様の提案で、メイ王子、マク王子、魔法使いの三人はこのお城で共に暮らすこととなり、
その中で夢喰姫が自分から一緒になりたいと、心から思える相手が出来たなら、その者との婚約を許すということで、はなしはどうにか収まることが出来たと言います。
こうして、夢喰姫の小さな冒険の物語は幕を閉じました。
――けれどこの後、夢喰姫に3人からの度重なるアプローチと厳しい花嫁修業が待っているということは、また別のお話です』
■おしまい。
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