お姫様の御伽噺が好き。
白雪姫、灰被り姫、眠り姫…どれも素敵な王子様が迎えに来てくれるから。
だから自分がそんなお姫様だったらと思いながら、絵本の王子様に恋をした。
いつか自分にもこんな王子様が迎えに来てくれると信じて疑わなかった…。
けれど
私は、白雪姫でも灰被り姫でも眠り姫でもない。
どのお姫様にも成れない。
私はどこまで成長しても私でしかなくて、絵本の王子様はみんな絵本のお姫様の為に存在している。
その事に、気づいてしまった。
…だから私は、私だけの王子様をずっとずーっと待ち続ける。
私は夢喰姫(ユメハミヒメ)。山の奥聳える城で、あなたを永遠に待っているの…。

気が付くと閑散と寂れた劇場に居た。
何もわからぬままに、現れた黒衣の語り部に促される。

「あなたの物語はあなたが決める事。この劇場での泡沫を望むなら、私はその夢を語り聞かせるだけです。さあどうぞ、お好きなお席へお掛けください」

「あなたはどんな夢をご所望ですか?」
そして再び紡がれる、嘗て終わったはずの物語。
――その舞台の幕が今開かれる。

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