ハミ
(そんなに離れて無い筈だから、探せば見つかるかしら)
語り部
『夢喰姫は私を探して街中を探し歩くことにしました。
しかし、こうして一人で街を歩くのは初めてな夢喰姫は、気づかぬうちに街の外へと出てしまいます。
次第に道の舗装がなくなっていく地面に、ようやく何かがおかしいと気付いた夢喰姫は慌てて引き返そうとしましたが、その道を見知らぬ男たちによって塞がれてしまいます。
どうやら彼らは、この辺りを縄張りにしている盗賊たちなようです』
ハミ
「な、何か用ですか……?」
盗賊A
「あんた、随分良い服を着ているなぁ、へへへ」
盗賊B
「金目の物全部置いてきゃ、命までは盗らないでやるよ」
ハミ
「そんな…私今は何も持ってなくて……」
盗賊A
「ならその服脱いで置いて行きな、女の服は高く売れんだ」
ハミ
「い、嫌っ!」
語り部
『伸ばされる手から逃れるために、夢喰姫は後退り叫びました。すると……』
メイ
「お前ら何をやってるんだ」
ハミ
「メイ!?」
盗賊B
「アァ? なんだぁ、お前」
メイ
「先に聴いたのはオレの方だ」
盗賊A
「このお嬢ちゃんが通行料も払わずに俺たちの縄張りに入ったから、金を請求してんだよ」
盗賊B
「お前も死にたくなけりゃ金払うこったな!」
メイ
「言っておくけどな、そいつに手を出したらただじゃすまないからな」
盗賊A
「はぁ?」
盗賊B
「お姫様を守るヒーロー気取りかぁ?」
メイ
「否定はしない。現にそいつはこの国のお姫様だからな」
盗賊B
「あ?」
盗賊A
「何言ってんだ?」
メイ
「だから、ハミに手を出したらお前らはオレだけじゃなく、この国そのものを敵に回すことになるんだよ。こっちは親切心で言ってんだぜ、黙って引き返せよ下衆共」
盗賊B
「わけわかんねー事言ってんじゃねぇ! この女がお姫様だっつー証拠はあんのかよ!!」
盗賊A
「ああもう、お前らウゼェな……とっとと黙らせて身包み剥いじまおう」
ハミ
「きゃぁっ!?」
語り部
『業を煮やした盗賊の一人が、夢喰姫の髪の毛を乱暴に掴み刃物を取り出しました。
恐怖で息が止まってしまう夢喰姫とは逆に、メイ王子はため息を一つ吐き、鋭い目を一層鋭くして懐から短刀を投げます。
その軌道は一直線に盗賊の手元に当たり、刃物を弾き落としたようです。それと同時に、夢喰姫の拘束が緩んだことが分かります。
メイ王子は周りが騒然とする中で、夢喰姫の手を取ると街へ向かって駆け出しました。
盗賊達も、最初こそ石を投げて二人を追いかけましたが、街に近づくにつれてその影は無くなり追手を撒くことが出来たようです』
ハミ
「はぁ、はぁ……た、助けてくれてありがとう、メイ」
メイ
「おっっっっ前は!!!! どうしてあんなところを一人でフラフラしてたんだ!!!!!」
ハミ
「っ」
メイ
「偶然オレが通りかかったから良いものの、一人でどうする心算だったんだよ」
ハミ
「ごめんなさい……」
メイ
「……無事でよかったけどさ」
ハミ
「うん、メイのお陰だわ」
メイ
「つかさ、本当なんでこんな城から離れた場所にいるんだよ。城でなんかあったのか?」
ハミ
「それは……」
語り部
『夢喰姫は迷いましたが、助けてくれたメイ王子へ包み隠さず自分の考えを告げることにしました。
怒られてしまうだろうかと、お城へ戻るよう言われるのではないかと構えていると、メイ王子はあっけらかんと応えます』
メイ
「いいんじゃないか」
ハミ
「怒らないの?」
メイ
「まあ、本音を言えば城に戻った方が良いと思うし、戻らないにしても、オレがお前を手伝ってやれたらいいなと思うけどさ、ハミはどっちも嫌なんだろ? 心配事は多いけどさ、お前が自分でそうしたいって選んだ事ならオレがとやかく言う問題じゃない」
ハミ
「うん。これは自分でどうにかしたいの。だから、ごめんね」
メイ
「……そか。応援するよ」
ハミ
「ありがとう、メイ」
メイ
「ま、女王陛下に言っちまった手前、戻るのも難だし、オレはオレで宝石を探させて貰うけどな」
ハミ
「えっ!?」
メイ
「ハミには負けないからな」
ハミ
「むむ、負けないんだから」
語り部
『そうして他愛もない話をしながら、二人は街へ戻ります。メイ王子に宿まで送り届けてもらうと、其処でようやく私と再会することが出来ました』
旅人
「私が付いていながら逸れてしまうなんて、申し訳ない……」
ハミ
「旅人さんのせいじゃないわ! 旅人さんは、逸れた時は動かないようにって言ってくれていたのを忘れた私がいけないんだもの!」
メイ
「次からはこんなことがないようしっかりハミを見ててくださいね」
旅人
「肝に銘じておきます」
メイ
「じゃ、オレはこれで」
ハミ
「メイは宿に泊まらないの?」
メイ
「ああ。オレはもう少し先に行って野宿することにするよ」
ハミ
「そう……。気を付けてね」
メイ
「ああ。ハミもな」
語り部
『メイ王子を見送り、夢喰姫は宿で休むことにしました。
その晩は、夢喰姫の小さな冒険譚とメイ王子の武勇伝を聴かされることになったのは、言うまでも御座いませんね』
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